急に「消費税の中間納付」の通知が届いて、戸惑ったことはありませんか?
来たから対応しているけれど、「そもそもなぜ払うのか?」「どうやって金額が決まっているの?」と疑問に思う人も多いと思います。
実は、消費税の中間納付は納税者にとっても国にとっても意義のある制度です。
そして、納税額の計算方法や納付回数、会計処理の方法まで、知っているのと知らないのとでは日々の経営判断や資金繰りに大きな差が生まれる可能性もあります。
この記事では、「そもそも中間納付とは?」という基本から、対象となる条件や納付回数のしくみ、会計処理のポイント、そして納付しなかった場合の影響まで、やさしく丁寧に解説していきます。
読み終えたとき、「なるほど、こういうことだったのか」と少し安心していただけるように—そんな思いを込めてお届けします。
消費税の中間納付とは?
中間納付とは、1年に一度ではなく、年の途中で何回かに分けて消費税を納める仕組みです。
本来、消費税の納付期限は、原則として年1回で次のようになっています。
- 法人の場合:事業年度終了の翌日から2ヶ月以内
- 個人事業主の場合:毎年3月末まで
これだけを聞くと「年1回まとめて払えばいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そこで中間納付の出番です。
なぜ中間納付があるのか?目的とメリット
中間納付は「国」、「納税者」ともにメリットがあるため、設けられた制度です。
「国」の目的
中間納付の目的は安定した税収を確保することです。
1年に1度しか税収を得られないと国は突発的な資金需要に対応できず、不都合が生じる場合もあります。
「納税者」にとってのメリット
一方で、納税者にとってもメリットがあります。
一度に多額の税金を支払うよりも、数回に分けて払う方が資金繰りの面で楽になる場合が多く、特に資金に余裕がない企業や個人事業主にとっては心強い仕組みです。
また、中間納付を行った場合でも、最終的な税額は決算や確定申告時に調整されます。もし中間納付で支払った金額が多かった場合には、還付を受けることが可能です。
消費税中間納付の対象者になるのは?
消費税の中間納付の対象者は、前年度の消費税として納めた税金が48万円(地方消費税を含まない額)を超えた企業や個人事業主です。
また、この48万円を超えるかを算出する際には、地方消費税をカウントしないことに注意が必要です。
私たちが日々の買い物で支払っている消費税は、実は「国税(消費税)」と「地方消費税」の2つで構成されています。
- 標準税率(10%)の場合:7.8%が国税、2.2%が地方消費税
- 軽減税率(8%)の場合:6.24%が国税、1.76%が地方消費税
中間納付の対象額を計算する際には、地方消費税を含まず、国税のみで算出する必要があります。
自社が中間納付の対象かわからない場合は、これを機に、納付書や確定申告書を手元に用意して昨年の納税額を確認してはいかがでしょうか?
義務がなくても任意で申告できる
前年度の納税額が48万円以下で、中間納付の義務がない場合でも、希望すれば中間申告制度を適用することができます。
この場合は、前年の確定消費税額の1/2を中間消費税として納付することになります。
資金繰りの計画などに応じて、中間納税を選ぶという柔軟な選択肢も用意されているので、必要に応じて活用しましょう!
消費税中間納付の時期・回数
中間納付の時期や回数は前年度の消費税額によって決まるのが特徴です。
昨年の納税額に応じて、年1回・年3回・年11回のいずれかに該当します。
昨年度の納税額 | 中間申告の回数 | 中間申告の納税額 |
---|---|---|
48万円以下 | 0(中間申告はなし) | 0(中間申告はなし) |
48万円超~400万円以下 | 年1回 | 昨年度の納付額の6/12 |
400万円超~4,800万円以下 | 年3回 | 昨年度の納付額の3/12 |
4,800万円超 | 年11回 | 昨年度の納付額の1/12 |
なお、中間納付の「回数」については、事業者の都合で変更することはできません。
あくまで前年度の納税額に基づいて機械的に判断される仕組みのため、「今年はまとめて納付したい」と思っても、その希望は通らない点にはご注意ください。
そして、中間納付の納付期限は原則、各期間終了の2ヶ月後です。
具体例をあげてみていきましょう。
決算が3月の会社の場合
中間納付の回数が1回の場合:課税期間は4〜9月です。納付期限は11月末です。
中間納付の回数が3回の場合:課税期間は4〜6月、7月〜9月、10〜12月に分かれます。納付期限は8月末、11月末、2月末です。
中間納付の回数が11回の場合:課税期間は「4月」「5月」「6月」「7月」「8月」「9月」「10月」「11月」「12月」「1月」「2月」の計11回です。納付期限はほぼ毎月ですが少しややこしいです。
→11回納付の場合だけは例外で、課税年度の開始から最初の1ヶ月分(例:4月分)は、2ヶ月経過した後のさらに2ヶ月後、つまり「8月末」が納付期限となるため注意が必要です。
また、個人事業主については、1月〜3月分をまとめて5月末までに納める形となります。
中間納付の対象者には納付書が送付されます!
中間納付の対象となった事業者には、所轄の税務署から納付書が送付されます。
この納付書を使用して、期限までに納税すれば申告は完了です。
消費税中間納付の計算方法
中間納付の納税額の計算方法は「予定申告方式」と「仮決算方式」の2種類があります。
予定申告方式は、前年に納めた消費税額をもとに税務署が中間納付額を自動的に算出してくれる仕組みです。そのため、事業者側の手間はほとんどなく、納付書が届けばそれに従って支払うだけで済みます。
一方、仮決算方式は、中間納付の期間ごとに決算を行い、自分たちで納税額を算出する方法です。実際の経営成績をもとに税額を計算するため、税額と実態が乖離しにくく、より正確な税務処理につながるのが特徴です。
どちらを選ぶかで手間や精度に違いがありますので、それぞれの特徴やメリット・デメリットを押さえていきましょう。
予定申告方式
予定申告方式とは、前の事業年度または前年に納めた消費税額をもとに、中間納付期間の回数で割って各期間の納税額を算出する方法です。あらかじめ決まった金額を基準に納付するため、自分で計算する必要がありません。
この方式を利用する場合、税務署から送られてくる納付書に、すでに納税額が記載されています。その納付書とともに同封されている消費税および地方消費税の確定申告書に必要事項を記入し、返送する流れになります。そして、指定の納付書を使って支払えばOKです。
予定申告方式の大きなメリットは、納税額の算出作業が不要なため、事務的な負担を軽減できる点です。ただし、確定申告書の提出自体は必要ですので、提出を忘れないようご注意ください。
仮決算方式
仮決算方式とは、中間申告のタイミングごとに決算処理を行い、実際の利益に基づいて納税額を算出する方法です。
経営の実態を正確に税額へ反映できる点が特徴ですが、その分、毎回の申告にかかる負担は大きくなります。
たとえば、前期と比較して業績が悪化している場合には、仮決算方式を選ぶことで中間納付の税額を抑えることが可能です。
資金繰りを柔軟に調整できるというメリットがある一方で、算定した税額がマイナスになったとしても、納税額が0円になるだけで還付は受けられない点には注意が必要です。
また、仮決算方式を用いた中間納付では、「簡易課税制度」の適用が認められており、みなし仕入率を使って消費税を計算することができます。これにより、計算の簡素化を図ることも可能です。
消費税中間納付の仕訳・勘定科目
消費税の中間納付における仕訳処理は、「税込経理方式」か「税抜経理方式」のどちらを採用しているかによって変わります。
「税込経理方式」では、取引金額の中に消費税を含めて記帳するため、中間納付にかかる消費税は「租税公課」勘定を使って処理されるのが特徴です。実際の納付額をそのまま費用として計上するシンプルな方法です。
一方、「税抜経理方式」では、日々の取引で受け取った消費税と、仕入れなどで支払った消費税を分けて処理します。そのうえで、差額を「仮払消費税」と「仮受消費税」で管理し、必要に応じて繰り延べる処理が求められます。
具体的に仕訳をみていきましょう。
税込経理方式
税込経理方式の仕訳では「租税公課」勘定科目を使用します。
例)中間申告で50万円の消費税を納付した
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
租税公課 | 500,000円 | 普通預金 | 500,000円 | 中間納付 |
税抜経理方式
税抜処理方式の場合「仮払金」または「仮払消費税等」の勘定科目を使用します。
また、決算時には、サービスの提供などで顧客から受け取った「仮受消費税」と、仕入れ等で支払った「仮払消費税」とを相殺します。その差額が納付すべき税額となり、「未払消費税」として翌期に繰り延べる処理を行うのが一般的です。
例)中間申告で50万円の消費税を納付した
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
仮払金 | 500,000円 | 普通預金 | 500,000円 | 中間納付 |
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
---|---|---|---|---|---|
仮受消費税 | 4,000,000円 | 仮払消費税 仮払金 未払消費税 |
2,000,000円 500,000円 1,500,000円 |
中間納付 |
中間納付をしない場合はどうなる?
前年あるいは前事業年度の消費税額が基準額(※48万円)を超えていたにもかかわらず、中間納付を行わなかった場合は、どうなるのでしょうか?
このような場合、たとえ事業者自身が消費税および地方消費税の確定申告書を提出しなかったとしても、税務署側では「予定申告方式による申告があった」とみなして処理されます。その結果、中間納付額も自動的に確定します。
この取り扱いに対する罰則(ペナルティ)は特にありませんが、いったん予定申告方式で確定された後は、期限後に仮決算方式に変更することはできませんので、申告の方法には注意が必要です。
もし単純に中間納付の納付が遅れた場合は、納付期限の翌日から実際に納付を行う日まで、延滞税が発生することになります。延滞税の計算方法は、通常の確定申告と同様です。
具体的には、納付期限の翌日から2ヶ月以内であれば年率7.3%、2ヶ月を超えた場合には14.6%の延滞税がかかります。
うっかり期限を過ぎてしまうだけで思いのほか負担が大きくなることもありますので、期日管理には気をつけましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
中間納付というテーマは、一見すると「難しそう」「面倒くさそう」と感じられるかもしれません。
しかし、その仕組みを理解すれば、納税に対する負担を軽減し、場合によっては、より柔軟な資金管理にも活かせる制度でもあります。
「なんとなくやっていた手続き」が「意味を持って選べる行動」へと変わることで、より主体的な経営や意思決定へつながることを願っています。
この記事が、経理・税務に携わる皆さまの日々の実務や判断の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後も経理・税務に役立つ記事を発信していきますので、またお越しいただければ嬉しいです。
それでは、また!
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