事業で使っている社用車のタイヤ交換「これって経費にできるのかな?」と悩んだことはありませんか?
結論から言うと、事業に必要な車両であれば、タイヤ交換費用は経費として計上可能です。
とはいえ、仕訳する際には注意すべきポイントがいくつもあります。
修繕費?車両費?それとも資本的支出?状況によって選ぶ勘定科目は異なります。
この記事では、タイヤ交換費用の仕訳ルールや経費計上の注意点を、事例別の仕訳例とともにやさしく解説します。
経理・税務の実務にすぐ役立つ内容なので、ぜひ最後までご覧ください。
タイヤ交換費用は”事業に関連する”なら経費計上が可能
事業に必要な車両のタイヤ交換費用ならば、経費に計上できます。
事業に必要な車両としては次のようなケースが挙げられます。
- 客先への訪問に使う車両
- 配送・送迎関連の事業で使う車両
これらはあくまで一例です。
ポイントは「事業のために使用していること」。
事業目的で使っている車両であれば、タイヤ交換費用は堂々と経費にできます。
タイヤ交換費用の仕訳に使う勘定科目
タイヤ交換費用の仕訳で使う勘定科目は、次の通りです。
- メンテナンス目的で摩耗したタイヤを交換をした場合は【修繕費】
- 車両にかかった費用にまとめたい場合は【車両費】
- 高性能なタイヤへ交換した場合は【車両運搬具(資本的支出)】
- タイヤ交換費用を弁償する場合は【雑損失】または【雑費】
各勘定科目を詳しく解説しますので、みていきましょう。
【修繕費】
タイヤ交換は、車両の定期的なメンテナンスのひとつ。
事業に使っている車両であれば、タイヤ交換にかかった費用は「修繕費」として仕訳するのが一般的です。
そもそも「修繕費」とは?
修繕費とは、事業用の資産—たとえば建物や備品、そして車両など—を維持・修復するためにかかった費用をまとめたものです。資産の状態を元に戻すための支出として位置づけられます。
つまり、タイヤ交換は車両の維持に必要な作業であり、事業活動を支える重要な修繕であるため、税務処理としても「修繕費」として計上するのが妥当です。
【車両費】
タイヤ交換にかかった費用は「車両費」として計上することもできます。
特に、車両に関する諸費用をまとめて管理したい場合には、「車両費」を使うとシンプルでわかりやすくなります。
そもそも「車両費」とは?
「車両費」は、事業用車両の維持や運行にかかる費用を集約するための勘定科目です。具体的には、以下のような費用が含まれます。
- 修理代
- ガソリン代
- 車検代
- タイヤ交換費用など
仕訳は一貫性が大切!
注意しておきたいのが「継続性の原則」です。一度「車両費」として処理する方針を決めたら、次回以降も同じ科目を使うようにしましょう。
毎回違う勘定科目で処理してしまうと、「一貫性に欠ける」と判断され、経費として認められない可能性が出てきます。
なので、会計処理の選択に幅がある場合は、会社として会計方針を決めておくと安心です。
【車両運搬具(資本的支出)】
車両の性能アップを目的とした「高性能タイヤ」への交換費用は、通常のメンテナンスとは扱いが異なり、資本的支出に該当します。
この場合、費用ではなく「車両運搬具」で固定資産に計上して、減価償却しましょう。
例外:金額や交換の頻度によっては経費にできる
次のような場合は、資本的支出に該当せず、経費として計上することができます。
- 交換費用が20万円未満である場合
- おおむね3年以内の周期で繰り返し実施していることが、実績や状況から明らかである場合
このようなケースでは、「修繕費」や「車両費」として経費処理が可能です。
1 その支出した金額が60万円未満のときまたはその支出した金額がその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるときは修繕費とすることができます。
2 法人が継続してその支出した金額の30パーセント相当額とその固定資産の前事業年度終了の時における取得価額の10パーセント相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出としているときは、その処理が認められます。ただし、上記の一つの修理、改修などの金額が20万円未満の場合またはおおむね3年以内の期間を周期として行われることが明らかな修理、改修などである場合の費用および上記1の適用のある支出額については、それぞれの取扱いが優先して適用されます。
【雑損失・雑費】
事業用車両のタイヤ交換ではなく、第三者のタイヤを破損してしまい弁償が必要になった場合には、「雑損失」や「雑費」に該当します。
タイヤ交換費用を弁償することとなった場合、
- 弁償が本業の売上と関係なく発生した場合は「雑損失」
- 弁償が本業に関係して発生した場合は「雑費」
の勘定科目を使います。
【事例で解説】タイヤ交換費用の仕訳例
タイヤ交換費用の仕訳例をケースごとに解説していきます。
古くなったタイヤを交換する場合
社用車のタイヤが摩耗してしまった場合、それを交換する費用は「車両の性能を維持するための支出」として、「修繕費」で仕訳するのが基本です。
たとえば、社用車のタイヤ交換を業者に依頼し、代金5万円を普通預金から振り込んだ場合の仕訳は、次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 |
なお、社用車に関連する費用を「車両費」にまとめて計上している場合は、「車両費」で計上しても問題ありません。
社用車の性能を高めるタイヤに交換する場合
車両の走行性能や乗り心地をアップさせる目的で、高性能タイヤに交換をし、タイヤ4本で20万円以上する場合は「資本的支出」に該当します。
資本的支出に該当するタイヤ交換費用は、車両と同じ「車両運搬具」に仕訳して固定資産に計上しましょう。
たとえば社用車のタイヤを高性能タイヤに交換するための費用として、代金20万円を普通預金から振り込んだ場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
車両運搬具 | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
以降は毎年、車両本体と同じ償却率で減価償却します。
ただし、20万円未満の場合は、車両性能の上がるタイヤ交換も「修繕費」で経費計上が可能です。
実務では、金額と目的の両方を見ながら仕訳の判断をすることがポイントになります。
プライベート兼用の車両でタイヤ交換する場合
事業とプライベートで兼用する車両のタイヤ交換をした場合は、家事按分が必要です。
たとえば事業とプライベートで兼用(事業用80%・私用20%とする)している車両のタイヤ交換費用5万円をクレジットカードで支払った場合は、以下の仕訳をしましょう。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
修繕費 | 40,000円 | 未払金 | 50,000円 |
事業主貸 | 10,000円 |
ちなみに、プライベート兼用の場合は、タイヤ交換費用だけでなく、ガソリン代や車検費用なども家事按分して計上しましょう。
弁償のためにタイヤ交換費用を支払った場合
第三者のタイヤを破損してしまい、弁償が必要になった場合、その費用は状況に応じて「雑費」または「雑損失」として処理することになります。
「雑費」または「雑損失」どちらを使うかの判断のポイントは、「本業との関係性」です。
- 弁償が本業の売上や業務活動に関連して発生した場合 →「雑費」
- 弁償が本業とは直接関係ない場合 →「雑損失」
たとえば、業務中の顧客対応の際に誤って相手のタイヤを破損し、現金3万円を渡して弁償したというケースでは、本業との関連が明確なため「雑費」で処理します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
雑費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 |
タイヤ交換費用の仕訳や経費計上に関する注意点
- 消耗品費には仕訳しない
- 機器の取り付けも行う場合は分けて計上するケースもある
- プライベートでも使用している場合は家事按分する
それぞれの注意点を詳しく解説します。
消耗品費には仕訳しない
タイヤは走行するたびに摩耗するため、定期的に交換する”消耗品”のように感じられますよね。しかし、「消耗品費」ではなく、「修繕費」や「車両費」として処理するのが一般的です。
消耗品費は、新規購入した物品の費用に対して使う勘定科目ですが、タイヤ交換費用はすでに保有している車両への費用です。なので、新規購入した物品ではなく、既存車両の修繕費や車両費と考えるほうが適しています。
勘定科目の選択は状況や仕訳のルールにあわせて、適切な使い分けが必要です。
機器の取り付けも行う場合は分けて計上するケースもある
タイヤ交換と同時に、カーナビやETCなどの機器も取り付けるなら、勘定科目を分けて計上しなければならないケースも存在します。
たとえば、タイヤ交換時に、カーナビやETCを新たに購入・設置した場合、これは「車両の性能向上」に該当するため、資本的支出として固定資産(車両運搬具)に計上する必要があります。
ただし、費用が20万円未満の場合は資本的支出に該当する内容も、修繕費や車両費で経費計上しても問題ありません。
プライベートでも使用している場合は家事按分する
事業用の車両をプライベートでも使っている場合、タイヤ交換費用もその使用割合に応じて分けて計上する必要があります。これを「家事按分」と呼びます。
按分割合の明確な比率は決まっていません。
だからこそ、「客観的に見て納得できるか」が大事なポイントになります。
一般的には、以下のような基準で割合を決めることが多いです。
- 事業利用と私的利用の走行距離の割合
- 事業利用と私的利用の使用日数の割合
まとめ
いかがだったでしょうか?
事業用車両のタイヤ交換費用は、多くの場合「修繕費」や「車両費」として経費計上できます。
ただし、交換の目的や金額、取付内容によっては「資本的支出」として固定資産に計上する必要があるケースもありました。
また、プライベート兼用の場合は「家事按分」、第三者への弁償では「雑費」や「雑損失」といった処理も必要になります。
ポイントは、「何のための支出か」「どのような状況か」を明確にし、継続的に適切な勘定科目を使い分けることです。
この記事が、日々の会計処理の疑問を解決するヒントになれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
今後も経理・税務に役立つ記事を発信していきますので、またお越しいただければ嬉しいです。
それでは、また!
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