起業を考えている人、法人をはじめて設立する人によく聞かれるのが、「必要な届け出」と「法人の一年間のスケジュール」についてです。
チャレンジしてみたいと思いつつも、やはり面倒なバックオフィス業務をやりきれるか?心配ですよね。
そこで今回は、法人を設立したときに、「必要な届出一覧」と「法人の一年間のスケジュール」を確認したいと思います。
会社設立に必要な届け出一覧
今回は会社設立時に必要になりそうな届け出一覧になります。
自分の会社に必要かどうかの判断は表の「対象」の列をご覧になって確認してください。
対象 | 届出書等 | 提出期限等 | 届け先 |
---|---|---|---|
会社を設立した場合 | 株式会社設立登記申請書 ・取締役会議事録 ・就任承諾書 ・印鑑証明書(代表実印) ・株主総会議事録 ・定款 ・資本金の額の計上に関する証明書 ・払込証明書 ・法人印(実印) ・印鑑届書 |
会社設立の日から2ヶ月以内 | 法務局 |
会社を設立した場合 | 法人設立届出書 ・登記簿謄本 ・定款の写し ・設立時の貸借対照表 ・株主名簿の写し ・現物出資があるときは出資者の氏名・出資金額等を記載した書類 |
会社設立の日から2ヶ月以内 | 税務署 |
会社を設立した場合 | 法人設立届出書 ・登記簿謄本 ・定款の写し |
会社設立の日から15日または1ヶ月以内(各都道府県によって若干異なる) | 都道府県税事務所 |
会社を設立した場合 | 法人設立届出書 ・登記簿謄本 ・定款の写し |
会社設立の日から2ヶ月以内(各市区町村によって若干異なる) | 市役所(市区町村) |
青色申告の承認を受けようとする法人 | 青色申告の承認申請書 | 青色申告によって申告書を提出しようとする事業年度開始の日の前日まで | 税務署 |
事前確定届出給与について届け出る場合 | 事前確定届出給与に関する届出 | 株主総会等の決議によりその役員の職務につき「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」をした場合における当該決議をした日(同日がその職務の執行を開始する日後である場合にあっては、当該開始する日)から1月を経過する日まで | 税務署 |
棚卸資産の評価方法を選定して届け出る場合 | 棚卸資産の評価方法の届出 | 設立第1期の確定申告書の提出期限 | 税務署 |
減価償却資産の償却方法を選定して届け出る場合 | 減価償却資産の償却方法の届出 | 設立第1期の確定申告書の提出期限 | 税務署 |
給与等の支払を行う事務所等を開設、移転又は廃止した場合(「個人事業の開廃業等届出書」を提出する場合を除きます。) | 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 開設の日から1か月以内 | 税務署 |
給与の支給人員が常時10人未満である給与等の支払者が、給与等から源泉徴収した所得税の納期について年2回にまとめて納付するという特例の適用を受ける場合 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 随時(申請書を提出した月の翌月末までに通知がなければ、申請の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。) | 税務署 |
免税事業者が課税事業者になることを選択する場合 | 消費税課税事業者選択届出書 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(適用を受けようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中) | 税務署 |
課税期間の短縮を選択する場合 | 消費税課税期間特例選択届出書 | 課税期間の特例の適用を受け又は変更しようとする期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する期間である場合には、その期間中) | 税務署 |
簡易課税制度を選択する場合 | 消費税簡易課税制度選択届出書 | 適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中) | 税務署 |
従業員を雇用する場合 | 労働保険関係成立届 | 従業員雇用の日から10日以内。住民票などを添付。 | 労働基準監督署 |
従業員を雇用する場合 | 適用事業報告 | 従業員雇用の日から10日以内。 | 労働基準監督署 |
従業員を雇用する場合 | 労働保険概算保険料申告書 | 従業員雇用の日から50日以内。 | 労働基準監督署 |
従業員を雇用する場合 | 雇用保険適用事業所設置届(事業所設置届) | 従業員雇用の日から10日以内。労働保険関係成立届(労働基準監督署)などを添付。 | ハローワーク(公共職業安定所) |
従業員を雇用する場合 | 雇用保険被保険者資格取得届 | 従業員雇用の日から10日以内。労働者名簿、雇用契約書などを添付。 | ハローワーク(公共職業安定所) |
時間外・休日労働させる場合 | 時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定) | 遅滞なく速やかに | 労働基準監督署 |
常時、従業員を10人以上雇用する場合 | 就業規則届 | 遅滞なく速やかに | 労働基準監督署 |
非適用業種以外の個人事業主で、従業員が5人以上いる場合、または、任意に適用する場合 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 社会保険加入義務の事実発生から5日以内 | 年金事務所 |
非適用業種以外の個人事業主で、従業員が5人以上いる場合、または、任意に適用する場合 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 社会保険加入義務の事実発生から5日以内 | 年金事務所 |
非適用業種以外の個人事業主で、従業員が5人以上いる場合、または、任意に適用する場合 | 健康保険被扶養者 (異動) 届 | 社会保険加入義務の事実発生から5日以内 | 年金事務所 |
国民年金第2号被保険者が、配偶者を扶養にする場合 | 国民年金3号被保険者資格取得届 | 事実発生から5日以内 | 年金事務所 |
飲食店を開業する場合 | 食品営業許可 | 保健所へ事前相談後、店舗工事完成10日前 | 保健所 |
収容人数が30人を超える店舗、もしくは30人以下でも建物全 体の収容人数が30人以上の場合 | 防火管理者専任届 | 内装設計時 | 消防署 |
診療所・歯科診療所・美容所・理容所・クリーニング所等を開設する場合 | 開設届 | 保健所へ事前相談後、店舗工事完成10日前 | 保健所 |
法人のバックオフィス年間スケジュール
つづいて法人のバックオフィス業務の年間スケジュールをみていきましょう。
ここでは、3月末決算の法人を想定してスケジュールを書いていきます。
1月
- 固定資産税の償却資産に関する申告
毎年、1月1日時点で保有している償却資産の内容を、1月31日までに都道府県税事務所に届け出ます。償却資産とは、土地・建物以外の事業用資産のことです。例えば、パソコンや応接セット、コピー機、工場の機械などが該当します。償却資産は土地や建物とともに、固定資産税が課されます。
- 源泉所得税の納付
本来は、毎月の源泉所得税を翌月10日までに納付しなければなりません。
しかし、従業員数が常時10人に満たない会社の場合は、7月と1月に半年分をまとめて納付することができます。
従業員から7月~12月に源泉徴収した所得税を半年分を1月20日までに納付します。
- 法定調書・給与支払報告書の提出、支払調書の作成・提出
法定調書とは、源泉徴収票や不動産の使用料といった支払調書のことです。
これを1月末までに税務署に提出します。
また、従業員に支払った年間給与額を給与支払報告書として各市区町村へ提出します。
2月
- 固定資産税(都市計画税)(第4期分)を納付
固定資産税の納付期限は各市区町村が独自に決めることができるため、市区町村によって異なります。自分の会社が支払わなければならない固定資産税の納付期限がいつなのか、必ず納税通知書で確認してください。固定資産税は年間納付額を4回に分割して納付するのが一般的です。
3月
- 実地棚卸
決算日当日または決算日直前に在庫の現物を棚卸し、残高を明らかにします。実地棚卸は、4月に行う決算整理のために重要な手続きです。
4月
- 決算整理
3月決算の会社では、年初である4月は決算作業に忙しくなります。
3月末に棚卸で明らかにした在庫と帳簿残高とを確認し、差額があれば調整します。また、年度中の取引の中で、不明な入出金があれば、その原因を突き止めて正しい会計処理を行います。そして減価償却費の計上や勘定科目が適切か、など経理処理全体を見直します。
- 財務諸表の作成
決算整理の内容を元に、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など決算書と呼ばれる書類を作成します。市販の会計ソフトやクラウド会計を使用している場合は、日々の取引記帳を行うことで自動的に決算書が作成される仕組みになっています。
- 固定資産税(都市計画税)(第1期分)を納付
納付期限は各市区町村で異なる場合があります。
5月
- 法人税、消費税、法人事業税、法人住民税の確定申告と納付
期末から2カ月以内に確定申告書を作成・提出し、同時に納税しなければなりません。法人税、消費税は税務署に、法人事業税は各都道府県税事務所、法人住民税は各市町村へ提出します。
- 株主総会の準備
株主総会が6月に開催されるため、それ向けて準備しましょう。開催の1週間前までに、株主宛に開催通知を送ります。必要に応じて決算説明資料等の準備も行います。
6月
- 株主総会の開催
会社法の規定に基づき、株主総会が開催されます。株主に対して売上高、利益、前年比などの決算数値を報告します。
- 個人住民税の納付
納期の特例の適用を受けている場合 、6月10日までに社長や従業員から徴収した個人住民税の納付を行います。
7月
- 源泉所得税の納付
納期の特例の適用を受けている場合、1月から6月に徴収した半年分の源泉所得税をまとめて7月10日までに納付します。
- 固定資産税(都市計画税)(第2期分)を納付
納付期限は各市区町村で異なる場合があります。
- 健康保険・厚生年金保険の定時決定
4月から6月までの各従業員の社会保険料合計額を7月10日までに、日本年金機構に提出します。これを元に、9月以降の保険料が決まります。
8月・9月・10月
1年の内でもっとも落ちつく時期といえます。有給休暇等を利用してリフレッシュ期間にあてるようにしましょう。
11月
- 法人税、法人事業税、法人住民税の中間申告と納付
事業年度開始から6カ月を経過した日から2カ月以内に中間納付として、直前期の納税額に応じて法人税等の前払いを行います。
直前期の納税額のおおよそ半分を中間納付として支払い、決算期末の確定申告にも前払い分として考慮されます。仮に、当期の上半期で大きく赤字になったという場合は、仮決算を行い、納税額を少なくすることもできます。
- 消費税の中間申告と納付
直前期の消費税額が48万円超400万円以下の会社は、消費税の中間申告と納付を行います。法人税等と同様、一般的には直前期に納めた消費税額のおおよそ半額を納付します。
12月
- 年末調整
1月~12月に従業員から徴収した所得税を、年間所得に基づき再計算し、徴収しすぎた場合は還付、不足分がある場合は追加で徴収します。生命保険料や住宅ローン、扶養人数の変更などを加味して調整します。
- 固定資産税(都市計画税)(第3期分)を納付
納付期限は各市区町村で異なる場合があります。
- 従業員の住民税の納付
納期の特例の適用を受けている場合、10日までに従業員の住民税を納付します。
まとめ
おおまかにはこのような感じです。
結構気を配るポイントは多いですね。
しかし、独立起業する際にはどうしても必要ですし、手続きを漏らすことが一番怖いです。
後からペナルティを受けてしまう前に、どうぞ参考にしてください。
それでは、また!
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