令和7年度の税制改正では、防衛力強化に向けた財源額保のための増税のうち、たばこ税は令和8年4月から順次実施する方針が示されました。
今回はこの「たばこ税」がどんな内容なのか、改正の概要と背景、実施スケジュールや税負担の影響について、解説していきます。
2026年から実施されるたばこ税改正の概要と背景
(引用元:産経新聞「防衛財源目的の「たばこ税増税」で〝しれっと〟地方税も増収、年100億円超の副産物に」©産経新聞)
2026年(令和8年)から開始されるたばこ税改正は、は具体的に以下の二つの柱から構成されています。
- 加熱式たばこの課税方式の見直し(2026年4月および10月から実施)
- たばこ税の税率(国税部分)の引上げ(2027年4月から3段階で実施)
この改正は、防衛財源確保を主な目的とし、初めに加熱式たばこと紙巻きたばこの税負担格差を解消しすることを目的としています。
加熱式たばこは従来、紙巻きたばこと比較して税負担が低く設定されていましたが、この改正により両者の税負担が同等レベルになることが見込まれているのです。
現在、加熱式たばこ市場は拡大傾向にあり、この税制変更は市場動向にも影響を与える可能性があります。
また、この改正は2027年から3年間かけて全体の税率を段階的に引き上げる計画となっています。段階的に実施することで、消費者や市場への急激な影響を緩和する配慮がなされている形です。
紙巻きたばこは最終的に1箱あたり30円の増税となり、加熱式たばこは製品によってより大きな税負担増となる可能性があります。
それでは、それぞれみていきましょう。
1.加熱式たばこの課税方式の見直し
加熱式たばこの課税方式見直しは、2026年(令和8年)に2段階で実施されます。
これは、現行の換算方法から新しい換算方法への移行を意味します。
実施スケジュール
具体的な実施スケジュールは以下の通りです。
実施時期 | 現行の換算方法(A) | 改正後の換算方法(B) |
現行 | 現行の換算本数×1.0 | – |
2026年(令和8年)4月1日(第1段階) | 現行の換算本数×0.5 | 新換算本数×0.5 |
2026年(令和8年)10月1日(第2段階) | – | 新換算本数×1.0 |
新たな換算方法
特に注目すべきは、加熱式たばこの新たな換算方法の導入です。この新換算本数の計算では、以下の3つのルールが適用されます
- 紙その他類するもので巻いた加熱式たばこ0.35g = 紙巻きたばこ1本
- 上記以外の加熱式たばこ0.2g = 紙巻きたばこ1本
- 品目ごとの1個当たりの重量が4g未満のものについては、当該加熱式たばこの品目ごとの1個をもって紙巻たばこ20本に換算
2.たばこ税の税率引上げ
続いて、たばこ税の税率引き上げについて解説します。
3段階の引上げ計画
たばこ税の税率(国税部分)の引上げは、2027年(令和9年)4月1日以降の3年間にわたって段階的に実施されます。
この3段階の引上げにより、たばこの税率は最終的に現行から1本あたり1.5円(1箱20本あたり30円)増加することになります。
この段階的な引上げは、消費者や市場への急激な影響を緩和する「激変緩和」の観点と、たばこ利用者に対する「予見可能性への配慮」から採用されています。
具体的なスケジュールは以下の通りです。
実施時期 | 税率 | 増加額(1本あたり) | 増加額(1箱あたり) |
現行(本則) | 6,802円/千本 | – | 136.04円/箱 |
2027年(令和9年)4月1日(第1段階) | 7,302円/千本 | +0.5円/本 | +10円/箱(146.04円/箱) |
2028年(令和10年)4月1日(第2段階) | 7,802円/千本 | +0.5円/本 | +10円/箱(156.04円/箱) |
2029年(令和11年)4月1日(第3段階) | 8,302円/千本 | +0.5円/本 | +10円/箱(166.04円/箱) |
たばこ税改正の影響と市場への波及効果
国税の増収額
国税については計画通りにいけば約2000億円の増収が見込まれるとのことです。
また、地方税も100億円以上の増収が見込まれており、地方財源を増やす副産物を生んでいる
消費者への影響
加熱式たばこの課税方式見直しは、製品によってはより大きな価格上昇をもたらす可能性があります。特に、現行の換算方法と新換算方法の間に大きな差がある製品は、相対的に大きな増税となる可能性があります。
一方、たばこ税の引上げは、直接的にたばこ製品の小売価格に反映される可能性が高く、消費者の負担増加につながります。3年間で1箱あたり30円の増税となるため、たばこ愛好家にとっては中長期的に見ると大きな負担増となる可能性があります。
たばこ業界への影響
たばこ業界、特に加熱式たばこを主力製品とするメーカーにとって、この税制改正は事業戦略の見直しを迫る要因となりえます。
加熱式たばこと紙巻きたばこの税負担が同等になることで、価格面での差別化が難しくなり、製品の付加価値や機能性での競争がより重要になる可能性があります。
また、段階的な増税により、業界全体での販売戦略の見直しや、増税前の駆け込み需要と増税後の需要減少という市場の変動にも対応する必要があるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は2026年から始まるたばこ税改正について解説してきました。
2026年から始まるたばこ税改正は、日本の防衛財源確保を主な目的とした、加熱式たばこの課税方式見直しとたばこ税率の段階的引上げという二つの施策を柱としています。
- 加熱式たばこの課税方式見直しは2026年4月と10月の2段階で実施
- 税率引上げは2027年から3年間かけて実施されます。
この改正により、最終的に紙巻きたばこは1箱あたり30円の増税となり、加熱式たばこは製品によってはさらに大きな税負担増となる可能性があります。
段階的実施により急激な変化は避けられていますが、中長期的には消費者の負担増加や業界の事業戦略への影響は避けられないでしょう。
増税の目的が防衛財源の確保にあることから、この財源が実際にどのように防衛力強化に活用されるかについても、今後注目していく必要があります。
また、政党間での増税に対する立場の違いもありますので、今後の政治的な動きも引き続き注視する必要があるでしょう。
今後も税務・会計に役立つ記事を発信していきますので、またお越しいただければ嬉しいです。
それでは、また!
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