税務調査にAI導入で追徴課税が過去最高!その効果と方法と対策をまとめてみた

コラム

近年、税務署(国税庁)はAI(人工知能)を活用した税務調査を本格的に導入し、申告漏れや不正の発見に大きな変革をもたらしています。

その効果は明らかで、去年、所得税の追徴課税額は過去最高となりました。

所得税の追徴課税1398億円余 過去最多に “AI取り入れた結果” | NHK
【NHK】ことし6月までの1年間に行われた各地の国税局の税務調査で、所得税の申告漏れを指摘して追徴課税をした額が全国で1398億円…

本記事では、AIによる税務調査の現状と影響、そして納税者が取るべき対策について詳しく解説します。

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税務調査におけるAI活用の現状と進化

国税庁は、2021年度からAI(人工知能)を本格的に税務調査へ導入し、申告漏れや不正の発見に活用しています。

税務調査へのAI導入で次のような変化があったといいます。

  • AIは過去の申告データや調査事例を学習し、申告漏れの可能性が高い納税者や取引を効率的に抽出する役割を担っています。
  • 具体的には、現金収入が多い業種や、申告書に不自然な点(例:キリの良い金額の申告、不備の多さ)がある場合など、従来人手で行っていた「怪しい案件の選定」をAIが自動で行うことで、調査の効率化と精度向上が実現しています。
  • 2023年度には、所得税の申告漏れによる追徴課税額が過去最高となるなど、AI導入の効果が数字としても表れています。
  • また、2025年夏からは相続税の調査にもAIを本格導入し、財産債務調書や海外送金記録など多様なデータをAIで分析する体制が始まります。
相続税調査の対象を「AIが選別」いよいよ来年開始か、富裕層でなくてもターゲットになるワケ
国税庁では現在、相続税調査対象選定の迅速化のため人工知能(AI)の導入を急ピッチで進めている。相続税調査で狙われやすいといわれるのは富裕層だが、AIの判定基準はあくまでも数字の信ぴょう性。申告に「ミス」「不正」があれば相手が誰だろうと容赦はない。国が税収拡大に躍起になる昨今、その触手は相続の細部にまで伸びている。

AIによる税務調査の具体的な方法・仕組み

では、AIによる税務調査はどのような方法で行われているのでしょうか?

その具体的な仕組みについてみていきましょう。

①データ収集と統合

国税庁は、納税者の申告書・決算情報、金融機関や地方自治体からの情報、過去の税務調査事績など、多様なデータをデータベース化しています。

また、マイナンバーや法人番号を活用し、個人・法人の取引や財産情報をより正確に把握できる体制が整えられています。

②AIによるリスク分析とスコアリング

AIはそのデータベースを用いて、過去の申告データや不正事例、取引履歴を学習し、申告内容の整合性や不自然な点を自動で解析します。

例えば、業種ごとの傾向や申告数字の不自然さ、預貯金の動き、海外資産の申告有無、不動産や有価証券の取引履歴などを分析し、「申告漏れリスク」をスコア化するようです。

このリスクスコアに基づいて、AIが「調査対象」となる納税者や企業をリストアップしているといいます。

③調査対象の選定と調査官への割り当て

そして、AIが抽出したリスクの高い案件を中心に、調査官が実地調査や詳細な書類確認を実施します。

これにより、従来の「広く浅い調査」から「的確で深い調査」へと方針が転換されているのです。

④滞納者対応の最適化

滞納者に対しては、AIが過去の接触履歴や属性情報から、最も効果的な接触方法(電話・訪問・文書)やタイミングを予測し、効率的な徴収活動を実現しているようです。

AI導入による効果

では、税務調査へのAI導入によって、どのような効果があがっているか、みていきましょう。

①調査の効率化と精度向上

AI導入により、税務調査の調査件数は減少しているにもかかわらず、追徴税額は増加しています。これはAIが高リスク案件を的確に選定し、調査官が重点的に調査する体制がすでに機能している証跡といえます。

結果、2023年度の所得税調査では、調査件数が減少した一方で、追徴税額・申告漏れ所得額はいずれも過去最高を記録しています。

②税務行政全体の効率化・高度化

限られた人的リソースを有効活用できるようになり、調査官はAIが抽出した「本当に怪しい案件」に集中できるため、調査の質が向上しています。

統計分析や機械学習を用いた高度なデータ分析により、目視や経験だけでは見逃していた不正や申告ミスも発見しやすくなっているのです。

AIによる客観的なリスク分析により、特定の納税者や業種に偏らない公平な調査が実現しやすくなるでしょう。

納税者が取るべき対策

では、AI時代の税務調査対策として、納税者や企業が意識すべきポイントはあるでしょうか?

①正確な帳簿・証憑管理の徹底

AIは膨大なデータから不自然なパターンや異常値を自動検出します。

不明瞭な取引や説明できない帳簿の記載はリスクとなるため、日頃から証拠書類を整理・保存し、説明責任を果たせる体制を構築しましょう。

②申告内容の見直しと最新税制への対応

税制改正や税制の適用ミスもAIの検出対象となります。

なので、最新の税制改正のキャッチアップや、活用する税制の適用要件のチェックは、これまで以上に正確な対応が求められます。

申告前に内容を再確認し、必要に応じて専門家(税理士等)に相談することが重要です。

③AIによるリスク分析の活用

企業向けには、自社の取引データをAIで自動分析し、税務リスクの高い項目を事前に可視化できるサービスも登場しているようです。

これが活用できれば、調査で指摘されやすいポイントを早期に把握し、優先順位をつけて対策を講じることが可能です。

まとめ

いかがだったでしょうか?

今回は「税務調査におけるAI活用の現状と進化、その具体的な方法や対策」についてお話しました。

税務署によるAI活用は今後さらに進展し、調査の効率化・高度化が加速しています。

納税者側も、これまで以上に正確な帳簿管理や、税制の理解と正確な適用が求められます。

その対策となるサービスも徐々に登場してきてはいますが、有効活用できるかは納税者次第でもあるので、やはり税務リテラシーを上げていくことは必要になっていくかなと思います。

難しい場合は、どんどん税理士を活用していきましょう。

(税理士としても身が引き締まる思いです。)

最後までお読みいただきありがとうございました。

今後も経理・税務に役立つ記事を発信していきますので、またお越しいただければ嬉しいです。

それでは、また!

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