【法人税】退職金は損金になる?従業員退職金と役員退職金の損金算入時期

退職金の損金算入時期解説 法人税

あなたの会社に退職金制度はありますか?

少し前には夫婦の老後資金は公的年金以外に「30年で2000万円が必要」とした金融庁の報告書が話題になりましたね。

年金不安をあおる報道や広告も定期的に流れるご時世、退職金についてはやはり注目されるところです。

ちなみに厚生労働省の就労条件総合調査では、集計対象企業のうち「退職金の制度あり」と回答した法人は実に約80%にも上ります。

★企業規模別の退職金制度導入状況★

従業員数 退職金制度あり 退職金制度なし
全企業平均 80.5% 19.5%
1,000人以上 92.3% 7.7%
300~999人 91.8% 8.2%
300~999人 91.8% 8.2%
100~299人 84.9% 15.1%
30~99人 77.6% 22.4%

(出典:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」より加工)

縄文会計の中村
縄文会計の中村
そういう意味では日本の企業さんたちは従業員に優しい感じになっていますね。

今回はそんな退職金を出す企業側の法人税の観点から書いていきたいと思います。

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従業員退職金の損金算入時期について

法人が従業員に対し支給する退職金については、法人税法上の具体的な決まりはありません。

法人税法基本通達2-2-12で規定される債務の確定要件を満たせば、その退職金は税務上の損金として認められると考えられています。

つまり、①退職の事実と②退職金の金額の確定によって損金算入の時期が決定されることになります。

したがって、未払金に計上しても前述の2要件を満たさない場合は税務上の損金にできませんし、満たしていた場合は、支給前であっても未払金に計上して損金にできます。

(ちなみに法人税法上の退職給与引当金(退職給付引当金)の損金算入の制度は、平成14年の改正で廃止されました)

役員退職金の損金算入時期について

ところが、法人が役員に対して支給する退職金については、税務上の取り扱いに具体的な決まりがあります。

法人が役員に支給する退職金は、「適正な額」である場合、「原則として」その具体的な額が確定した日の属する事業年度において損金に算入することができます。

ここでいう「適正な額」とは、その役員の在任期間や、役職、報酬額に基づいて役員退職金規程で計算された金額で、その法人と同じ業種で同程度の規模感の法人の役員に対する退職金の支給状況と比較して、妥当な金額である場合、ということです。

「役員退職金が確定した」とは、会社法第361条の規定により、一般的に、株主総会でその退職金の具体的な金額、支給時期、支給方法を決定することをいいます。

とはいえ、上場会社などでは、個人の報酬をつまびらかにすることを回避するなどのために、株主総会では限度額を決定し具体的な金額は開示せずに支給に関する基準のみを提示し、具体的な金額等はその決定を取締役会に委ねることがよく行われています。

そして、「原則として」退職金の額が確定した日の属する事業年度に損金に算入と書きましたが、法人が退職金を実際に支払った事業年度に費用として計上した場合は、その支払った事業年度において損金に算入することも認められています

逆に、退職金が具体的に決まっていない場合、例えば取締役会で内定した金額を会計上費用と未払金に計上した場合などでは、税務上は損金として認められません。

退職していなくても損金算入できる場合がある

また、実際に退職はしていなくても、退職金の損金算入が認められる場合もあります。

それは、法人の使用人が役員に昇格したときに支給する退職金がこれにあたります。退職給与規程に基づいて使用人であった期間の退職金として計算される金額を支給した場合は、その支給した事業年度に損金算入ができます

また、役員の分掌変更等があった場合は退職金として認められることもあります。

しかし、会計上未払金に計上しただけでは、その事業年度の損金としては認められませんので注意が必要です。

おわりに

従業員の退職金の損金算入要件は退職の事実と金額の確定の2点であるのに比べて、役員の場合には役員退職金規程の用意、株主総会の決議、金額相場など注意すべき点が多くあるのがおわかりいただけたと思います。

退職金は、税務調査でもチェックのポイントとなりますし、どのケースに当てはまるのか、規程、議事録など手続きの要件を注意深く確認する必要があります。

とはいえ、企業の功労者を労い生活を守るためにも、優秀な人材に長く働いてもらうためにも、とても大事な制度なので、じっくり理解して適切に退職金制度を整備・運用していっていただきたいです。

わからないときは税理士にすぐ相談してください。

それでは、また!

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